加熱式たばこの経過措置は継続へ――ホールの喫煙環境、次の判断はいつ来るか

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厚生労働省の専門委員会が7月、受動喫煙対策の見直しに関する議論のとりまとめ案を示しました。加熱式たばこの取り扱いは経過措置を継続する方向で、ホールにとっては、加熱式たばこエリアで遊技しながら喫煙できる現在の運用が当面そのまま続く見通しです。ただし、これで議論が終わったわけではありません。何がどこまで決まったのか、整理します。

参照:加熱式たばこの規制強化を見送る方針、受動喫煙の人体への影響「研究少なく判断できない」…厚生労働省 : 読売新聞

専門委員会が示した方向性

厚生労働省の受動喫煙対策専門委員会は、改正健康増進法の5年後見直しの規定にもとづき、施行状況の確認と議論を重ねてきました。7月16日の第8回会合で示されたとりまとめ案では、4つの論点それぞれについて方向性が整理されています。

加熱式たばこは「経過措置を継続」

4論点のうち、ホールに直接関わるのが指定たばこ、つまり加熱式たばこの取り扱いです。とりまとめ案は、この経過措置を継続するとしています。

理由として挙げられているのは、科学的知見の状況です。加熱式たばこの副流煙に有害物質が含まれることは報告されている一方で、人体への影響については、現時点で十分な知見が蓄積されているとはいえない。そのため現時点では取り扱いを継続したうえで、引き続き研究を進め、国内外の知見を収集していくという整理になっています。

残ったのは「打ちながら吸える」枠組み

ホールは第二種施設にあたり、屋内は原則禁煙です。喫煙させるには喫煙室が必要ですが、種類によって扱いが異なります。

喫煙専用室は紙巻きも加熱式も吸えるものの、室内での飲食等はできません。台から離れて喫煙室へ向かう形になります。これに対して指定たばこ専用喫煙室は加熱式たばこ専用で、室内での飲食等が可能です。この「飲食等」に遊技が含まれるため、加熱式たばこエリアや加熱式たばこフロアであれば、打ちながら吸えることになります。

多くのホールが加熱式エリアを設けているのは、この枠組みによるものです。今回継続とされたのは、まさにこの部分です。

「継続」に期限は示されていない

経過措置の継続と聞くと、当面は動かないという受け止めになりがちです。しかしとりまとめ案を読むと、加熱式たばこについて明確な期限は示されていません。

期限が示されているのは別の論点です。既存特定飲食提供施設、つまり施行時点で存在していた小規模な飲食店に認められている特例措置については、コロナ禍の3年間は感染症対策が最優先事項であったことを踏まえ、3年後を目途に、特例措置の継続も含めた検討を改めて行うとされています。報道などで見かける「3年」は、この部分を指しています。

一方、加熱式たばこについては、健康影響に関する知見の収集等を継続して行い、委員会に進捗状況を報告するとともに、新たな知見が得られた段階で検討する、という書き方になっています。つまり日付ではなく、研究の進み方が次の検討の引き金になる構造です。

この違いは、設備投資を考えるうえで意味を持ちます。期限が切られていれば、その時期を見据えて計画を立てられます。しかし知見次第となると、いつ議論が動き出すかは読めません。3年は安泰だと考えるのも、明日にも変わると身構えるのも、どちらも実態とはずれています。

もう一点、押さえておきたい動きがあります。とりまとめ案は、現時点で判明している健康影響について、わかりやすく国民に知らせるとしています。制度そのものが変わらなくても、情報発信は進むということです。加熱式たばこに対する客側の受け止めが先に動く展開は、十分にありえます。

分煙が続く前提だからこそ、設備は効いてくる

枠組みが当面維持されるということは、いま設けている加熱式たばこエリアを、これからも使い続けるということです。制度が変わらないぶん、設備そのものの状態が客の体感を左右します。

喫煙エリアは「作って終わり」ではない

加熱式たばこエリアには、煙が外に漏れない構造であること、屋外へ排気されていることなど、法令上の要件が定められています。設置時に基準を満たしていても、その性能が何年も同じまま保たれるとは限りません。

排気ファンの性能は経年で落ちますし、フィルターに汚れがたまれば風量は下がります。区画の扉が閉まりきらない、パーテーションのすき間が広がっている、といった物理的な劣化も起こります。設置から数年が経っているホールでは、当初の想定どおりに機能しているかを一度確認しておく価値があります。

においの苦情や、禁煙エリアの客からの指摘は、こうした劣化のサインとして表れることが多いものです。設備の問題として捉え直すと、対処の道筋が見えてきます。

なお、喫煙エリアの排気と空調は、電気の使い方とも直結する部分です。この点については電気代が経営を削る――ホールの『攻めの節電』、何から手をつけるかもあわせてご覧ください。

更新サイクルと制度の不確実性をどう噛み合わせるか

判断が難しいのは、投資の規模をどう決めるかです。

制度が動く時期が読めない状況では、エリアの大規模な作り替えに踏み切りにくい面があります。数年かけて回収する前提の投資が、途中で前提ごと変わる可能性を否定できないからです。

一方で、何もしないという選択も現実的ではありません。設備は使えば劣化しますし、機能していない喫煙エリアは、喫煙客にも非喫煙客にも不満を残します。

こうした状況では、いまある設備を確実に機能させる方向、つまり点検と部分的な更新に重心を置く考え方があります。大きな判断を保留したまま、現状の性能は維持できます。どこまで手をかけるかは各店の事情によりますが、選択肢を整理しておくこと自体が、次の局面での動きやすさにつながります。

標識の見直しという、コストのかからない一手

とりまとめ案には、設備投資を伴わずに着手できる論点も含まれています。標識の扱いです。

望まない受動喫煙の防止を実現するため、関係団体の協力を得て標識掲示の周知徹底を改めて行うこと、あわせて法令の規定の範囲内で、これまでの標識例とは別に、よりシンプルな標識の例を検討することが示されています。

狙いは、入店する前に喫煙環境がわかる状態をつくることにあります。喫煙する客も、煙を避けたい客も、店に入る前に判断できれば、店内での摩擦は減ります。

ホール側から見れば、掲示物の確認は今日からでも始められる作業です。主な出入口とエリアの入口に必要な標識が出ているか、色あせや破損で見えにくくなっていないか、加熱式専用であることが客に伝わる表示になっているか。制度の行方を待つ必要はありません。

今回見送られたのは「強化」であって「議論」ではない

加熱式たばこの経過措置は継続する方向となりました。ただし、それは規制強化が見送られたということであり、議論そのものが終わったわけではありません。知見が積み上がれば、検討は再び動き出します。

いつ動くかを読み切ることはできません。だからこそ、いまある喫煙エリアが設計どおりに機能しているかを確かめ、標識を整えておく。次の判断材料が出てきたときに動ける状態にしておくことが、現実的な備えになります。

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