電気代が経営を削る――ホールの『攻めの節電』、何から手をつけるか

電気代が経営を削る――ホールの『攻めの節電』、何から手をつけるか トピックス

夏に向けて、電力料金がさらに上昇する局面が近づいています。イラン情勢を背景とした燃料費の高騰が、今年の7〜8月分の電気代に本格反映される見込みです。空調・照明・遊技台・精算機と電力消費設備が多いホールにとって、今が対策を打つタイミングといえます。

なぜ今、電気代が上がるのか

2026年2月末、アメリカによるイランへの攻撃を受けて中東情勢が急速に緊迫化しました。イランが面するホルムズ海峡は世界の石油消費量の約20%が通過する重要航路で、日本が輸入する原油の多くもこの海峡を経由しています。情勢の悪化が長引けば、原油・LNG価格の上昇を通じて日本の電気料金にも影響が及びます。

ただし、電気料金への影響はすぐには現れません。燃料費調整制度は、3か月間の平均燃料輸入価格をもとに2か月後の電気料金単価に反映される仕組みになっています。そのため、3月のイランショックによる燃料価格の上昇は、7〜8月分の電気代に本格的に反映される見込みです。気象庁が「今夏は全国的に平年より高温」と予報しているなかで、空調需要が高まる夏本番に電力コストが重なるかたちになります。

ホールはもともと電力消費の多い業態です。空調・照明・遊技台・精算機・サンドなど、営業中は大量の設備が同時稼働します。電気代は固定費のなかでも比率が高く、料金単価の上昇が経営コストに直結しやすい構造にあります。

ホールの電力はどこに消えているか

全日遊連が2026年1月に公表した「2024年度 ホールにおける電気使用量等調査」によると、業界全体のCO2排出量は2007年度比で推計値53.9%減と、長年にわたる節電努力の成果が数字に表れています。LED照明の導入率は84.8%、空調設定温度のルール化も83.1%のホールで実施済みです。

ただし、これは「すでにやり切ったホール」が多いという見方もできます。電力消費の「見える化」設備を導入していないホールは38.3%にのぼり、電力ピークカット対策も33.1%が「予定なし」と回答しています。太陽光発電の設置に至っては、79.8%が導入予定なしと答えており、まだ手をつけていない領域が残っています。

電力消費の大半を占めるのは空調です。ホール内は常時多数の遊技台・照明・精算機が稼働しており、夏場は外気温の上昇とあいまって空調への負荷が一気に高まります。「すでにLEDに替えた」「設定温度はルール化している」だけでは、夏の電気代ピークには対応しきれない可能性があります。

参照:2024年度 ホールにおける電気使用量等調査

今すぐできる節電の優先順位

電気代対策はコストと効果のバランスを見ながら、優先順位をつけて進めることが重要です。

①空調の運用見直し(コストゼロ)

最もコストをかけずに効果が出やすいのが、空調の運用ルールの見直しです。空調はオンオフを繰り返すたびにフルパワーで起動するため、断続的な切り替えが最も電力を消費します。開店前から設定温度を一定に保ち、安定稼働させる運用に切り替えるだけで、消費電力を抑えられるケースがあります。設備投資なしで今日から始められる対策です。

②LED・照明の見直し(低コスト)

すでにLEDを導入済みのホールでも、照度調整機能のない旧型のままというケースがあります。照度をコントロールできるLEDへの交換は、投資回収期間が比較的短く、費用対効果の高い対策のひとつです。未LED化の照明が残っている場合は、優先的に対応する価値があります。

③精算機・サンドの待機電力管理(中コスト)

見落とされがちなのが、閉店後の待機電力です。精算機・サンドなどの設備は、電源を落とさない限り待機状態でも電力を消費し続けます。各設備の省エネモードや電源管理の設定を設備メーカーに確認することが先決です。積み重ねることで、年間数十万円単位のコスト削減につながるケースもあります。

④太陽光発電の活用(高コスト・長期投資)

初期投資が大きい分、長期的な効果が見込めるのが太陽光発電です。業界最大手のダイナムは2023年時点で61店舗に太陽光パネルを設置しており、PPAモデル(初期費用ゼロで設置し、発電した電力を購入する仕組み)での導入拡大を進めています。広い屋根や駐車場を持つホール物件は太陽光発電との相性がよく、自店の電力の約2割をまかなえる試算も出ています。

「攻めの節電」とは何か

節電というと、設定温度を我慢する・照明を暗くするといった「削減」のイメージがあります。しかし本来の節電は、設備の更新と運用の改善によって「コスト構造そのものを変える」取り組みです。

電気代が上がる局面において、「何もしない」は最もコストが高い選択肢になります。今夏の料金上昇が現実のものになってから動いても、設備更新には時間がかかります。今の段階で自店の消費電力の実態を把握し、優先順位をつけて手を打つことが、経営を守る「攻め」の判断です。

精算機・サンドをはじめとする設備の省エネモード確認や定期メンテナンスは、トラブル防止と電気代削減を同時に実現できる取り組みです。設備保守の見直しを、節電対策の入口として捉えてみてください。

節電対策は、続けることで経営を守る

電気代対策は、一度やれば終わりではありません。燃料価格や国際情勢の変化に合わせて、定期的に見直し続ける経営課題です。まず自店の消費電力の内訳を把握し、手つかずの領域がどこにあるかを確認することが、「攻めの節電」の第一歩になります。

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