2026年7月31日、パチンコ遊技機メーカーの豊丸産業が、パチンコ事業を停止しました。「ナナシー」や「ウィッチブレイド」といった個性的な名機で知られ、66年にわたり業界を支えてきた老舗の撤退は、大きなニュースとして受け止められています。
ただ、自店に豊丸産業の台を設置しているホールにとって、本当に気になるのはニュースそのものよりも、「あの台はこれからどうなるのか」「保守はいつまで受けられるのか」という足元の問題ではないでしょうか。
結論から言えば、慌てて撤去する必要はありません。しかし、何もしないまま放置してよいわけでもありません。本記事では、発表内容を正確に整理したうえで、ホール経営者が今すぐ確認しておくべき保守と撤去の判断を解説します。
豊丸産業、2026年7月末でパチンコ事業を停止——まず事実関係を整理する
まずは、何が決まったのかを正確に押さえておきます。報道の見出しだけを見ると「豊丸の台がもう使えなくなる」と受け取られがちですが、実際の発表内容はそこまで単純ではありません。自店の対応を考えるうえでも、事実の線引きが出発点になります。
停止したのは「設計・開発・製造・販売」——既設置機がすぐ遊技できなくなるわけではない
豊丸産業が停止したのは、パチンコ遊技機の設計・開発・製造・販売にあたる事業です。裏を返せば、すでにホールに設置されている同社の台が、この発表によって直ちに遊技できなくなるわけではありません。同社も、既設置機については検定期間内であればホール側の判断で引き続き運用できるとしています。
つまり、事業停止の一報を受けて即座に島から抜く、といった対応は必要ありません。ここを取り違えると、まだ十分に稼働できる台を早まって手放し、入替コストだけがかさむことになりかねません。まず「すぐに止まるわけではない」という前提を、店舗内で共有しておくことが大切です。
営業所閉鎖と保守対応——窓口は名古屋本社へ、保守は当面継続(終了日は個別案内)
一方で、サポート体制は確実に変わります。同社の発表によれば、東日本営業所(東京都台東区)と西日本営業所(大阪府大阪市)は2026年8月31日をもって閉鎖され、以降の問い合わせは名古屋本社のサポート窓口に一本化されます。日頃やり取りしていた担当拠点が変わるため、連絡先の付け替えは早めに済ませておきたいところです。
保守対応については、当面は継続する予定とされています。ただし、その終了時期は対象となるホールへ個別に案内される形です。ここが最も重要なポイントで、後述する撤去・入替のタイミングは、この「保守がいつまで受けられるか」を起点に逆算することになります。まだ案内が届いていないホールも、自店の設置機について保守終了の見込みを能動的に確認しておくと、後の判断がぶれません。
なぜ老舗が退いたのか——中小メーカーを追い込む構造
豊丸産業は「昨今の事業環境および経営状況を踏まえて」と説明していますが、この撤退は一社だけの事情に収まる話ではありません。近年は中堅・中小メーカーの倒産や事業縮小が続いており、豊丸産業の事業停止も、その大きな流れの中に位置づけられます。
背景にあるのが、ホール側の「機歴重視」の仕入れです。機械代の負担が重くなるほど、ホールは過去の稼働実績が読める機種、つまり大手の看板シリーズや人気機の続編を選びやすくなります。堅い仕入れとしては合理的な判断ですが、その裏で、中小メーカーの新規タイトルは、たとえ意欲作であっても島に置いてもらいにくくなります。結果として、資金力とブランドを持つ大手にさらに需要が集中し、大手と中小の格差が広がっていきます。
加えて、スマート遊技機時代に入ってからは型式試験の適合率が低迷し、新台そのものが世に出にくくなりました。開発費をかけても試験を通せず、通せても採用されない——この二重の壁は、体力の限られる中小メーカーほど重くのしかかります。豊丸産業の退場は、こうした構造が一つの形になって表れたものだと言えるでしょう。
自店の豊丸機、撤去・入替をどう判断するか
原則は「慌てて抜かない、しかし出口は前倒しで設計する」。台ごとに、次の3ステップで判断します。
台ごとに検定・認定の残期間を洗い出す
パチンコ遊技機は検定が3年、認定でさらに3年延長でき、最長6年設置できます。まず自店の豊丸機が検定機か認定機か、期限まで残り何か月かを台番ごとに一覧化してください。残期間が長い台と間もなく切れる台では打ち手が変わるため、この一枚が全判断の土台になります。
保守部品の供給期限から、入替のタイミングを逆算する
制度上の残期間があっても、故障時に部品が出なければ台は実質動かせません。豊丸産業は保守を当面継続するとしていますが、終了日は個別案内です。「検定・認定の残期間」と「保守がいつまで受けられるか」の早いほうが実質的な運用期限なので、そこから逆算し、稼働の落ちた台から閑散期に前倒しで入れ替えます。
検定切れ後の「認定」延命は、メーカー関与に注意
まだ稼働する台なら、認定申請で延命する手もあります。申請主体はホール営業者ですが、その過程で部品や書類の面でメーカー・販社の協力が要る場面があるとされ、豊丸産業のように製造元が撤退・保守終了すると延命のハードルが上がる可能性があります。延命を狙う台は、可否と手続きを早めに管轄の公安委員会や保安通信協会、行政書士へ確認しておくと安全です。
「撤退メーカー機」はこれからも出る——恒常的な備え
今回は豊丸産業の事例ですが、中小メーカーの淘汰が続く以上、「使っていたメーカーが撤退する」事態は、今後もどのホールにも起こり得ます。そのたびに慌てて対応するのではなく、平時から備えておく発想が大切です。
鍵になるのは、特定のメーカーや特定の看板機種への依存度を下げておくことです。人気シリーズに島を寄せすぎると、そのメーカーが供給や保守を止めた瞬間、フロアの一角がまとめて不安定になります。仕入れ先や機種の構成にある程度の幅を持たせ、一社が抜けても運用計画が大きく崩れないようにしておく——これが撤退リスクへの最も現実的な保険です。
あわせて見直したいのが、保守の体制です。メーカーごとの窓口に頼りきる形だと、そのメーカーが退場したときに保守が宙に浮きます。メーカーの動向に左右されにくい保守の受け皿を確保しておけば、こうした局面でも稼働を止めずに済みます。台の入替と島設備・保守の体制を、セットで棚卸ししておくとよいでしょう。
まとめ|慌てて抜く必要はない、しかし撤去・入替の段取りは今から設計する
豊丸産業の事業停止は大きなニュースですが、自店の台がすぐ止まるわけではありません。まず落ち着いて、台ごとに検定・認定の残期間と保守の期限を洗い出すことが出発点です。そのうえで、早く来るほうの期限から逆算して入替の段取りを組めば、慌てずに整理していけます。
そして今回を、一社への備えで終わらせないことです。特定メーカーへの依存度と保守体制を平時から見直しておく——それが、次の「撤退メーカー機」に動じないホールをつくります。


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